ピアソラ没後30周年、『アストル・ピアソラ 闘うタンゴ』改訂版のお知らせ
今日は2022年7月4日。アストル・ピアソラが亡くなってちょうど30年経った記念の日に、改めてお知らせしたいことがある。実は生誕101周年を迎えた3月11日にはFacebookやTwitterで告知済みだったのだが、1998年4月に上梓した『アストル・ピアソラ 闘うタンゴ』の改訂版を、同じ青土社から出版できることになった。
今改めて3月11日のFacebookへの書き込みを読み返すと、「没後30周年にあたる7月4日の刊行を目指し」などと書いているが、作業を始めてすぐ、とても間に合わないことが判明。年内に何とか出せるようにと、スケジュールを改めたほどだ。なにせ、巻末の資料作りにもう4か月も費やしていて、まだ終わらない。
巻末資料の中心がディスコグラフィーであること自体は変わらないが、細かい情報のアップデートだけでなく、内容はずいぶん変えてある。1998年当時は、まだ巷に様々なCDがあふれていた時代で、タイトル違いやジャケット違いで同じ内容のものが大量に出ていて、購買者の混乱を招いていた。そんなこともあり、海外盤、再発盤、編集盤など集められるだけの様々な種類のLPやCDを基本的にジャケット写真付きで掲載していた。だが、今回の改訂版ではそれらの情報はほぼ削った。情報はオリジナル盤(すべてジャケットまたはレーベルの写真付き)および近年のリイシューCDなどに絞り込んだが、その代わり、これは近年の一部音楽書籍にみられる傾向ではあるが、Spotifyなどサブスクリプションで聴ける音源にリンクするQRコードを掲載した。これが改訂版の大きな特徴となるだろう。なにせ、サブスクの方こそピアソラに関しては混乱状態で、他の演奏家によるものが幅を利かせ、本人の演奏に辿り着けないものも数多いのだ。また、CDの形では出ていないが配信のみで聴けるものも、数は極めて少ないが掲載してある(下に画像を載せたミルヴァとのライヴ録音もその一つ)。
初版のディスコグラフィーの付録3「ピアソラ自身が録音しなかったピアソラ作品一覧」は極めて簡単なリストだったが、ここに載せられていた多くの曲目が、この20年余りの間に新たに取り上げられるようになっていることもあり、リスト自体も前回の4ページから今回は8ページへと広がった。そして新たに、それらの曲目の初演もしくは重要な録音(当然ジャンルも多岐にわたる)を100点近くジャケット写真付きで紹介するページを作った。こちらは、特に最近のものは配信のみのものも多い。正直に言って、これは世界にも例がない画期的なページになっていると思う。ここまでは一応完成している。
そして、現在作成中なのが、フィルモグラフィー。ピアソラが音楽を担当した映画は全部で40タイトル弱だが、実はこれらのほぼすべてが、現在ではYouTubeや有料配信サイト、DVDなどのいずれかで観ることができるようになっていたのも驚きだった(今現在、視聴する手段が皆無なのは、1963年の"La fin del mundo"という一作品のみである)。というわけで、そのすべてを複数回観て(早口のスペイン語の聞き取り能力はほぼ皆無なので、YouTubeの自動翻訳機能などに頼りながら)、文章化するという作業を延々と続けているのである。
初版からの訂正すべき点はそれこそ大量にあるが、タイトルの訳し方などもそうだ。例えばホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編の映画化である"A intrusa"(ブラジル映画なのでこれはポルトガル語。スペイン語では"La intrusa")。私は単純に「侵入者」と訳してしまっていたが、この短編が掲載された『ブロディーの報告書』(鼓直訳、白水社/岩波文庫)では「じゃま者」となっているではないか(上の画像のように修正)。こうした調査不足も、今回はできるだけ補っていかなければと考えている。まだまだ先は長い。
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