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2022年2月

2022年2月11日 (金)

割れたSPレコードの修復、オーディオテクニカAT-MONO3/SPによるRIAAカーヴでの快適なSP再生

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昨年(2021年)11月の初め、某タンゴ・コレクターが手放したSPレコードおよそ3,000枚の大整理大会が某所で行われ、某有名タンゴ関係者2名と共に作業にあたった。私はそこから100枚ちょっとを選び出して引き取らせていただいたのだが、その自宅での整理が1月の終わりにようやく終了。

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すべてデータベースに入力し、すべてを最低1回は聴き、従来の手持ちと合わせたすべて(430枚ほど)に管理番号を付けて演奏者別・録音またはリリース順に並べ、ケース21箱にピッタリ収めた。データベースをみれば、何がどの箱に入っているか一目瞭然。

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という作業の終盤で、遠くに手を伸ばして無造作に持ち上げようとした1枚が、パリンと割れてしまった。しかもレーベルを確認すると、アニバル・トロイロ楽団の「勝利 (Triunfal)」(ピアソラ作編曲)ではないか。よりによって貴重な1枚を…。

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しかし、奇麗に割れてくれたので、後日修復作業を敢行。

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アロンアルファでの接着作業は無事に終わり、裏にはみ出して表面にこびりついた接着剤を削り取り(下の画像の白くなっている部分)、針飛びする部分もカッターまで使って修復。スクラッチノイズは出るものの、無事に再生できた。

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ところで、今回入手した100枚以上のSP盤の中には、反っているものもかなりあった。SP再生用のカートリッジにはSonovoxのMC-4というバリレラ型のものをメインで使っていたが、カンチレバーがほぼフラットなので反った盤だとカートリッジのボディの腹の部分で盤をこすってしまう(画像に写っている盤は反っていないが)。

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ということで、普段使っていなかったaudio-technicaの高出力MCカートリッジAT-MONO3/SPに替えてみた。再生は安定するが、高域の音が強めに感じた(理由は後述)。

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オーディオテクニカと言えば、昨年9月に入手して前回(もう4か月前になってしまった)紹介した、大当たりのVM型ステレオ・カートリッジVM750SHと一緒に、モノラルのVM610MONO(針はVMN10CB)も買っていたが、これは針をVMN70SPに替えることで、SP用のモノラル・カートリッジVM670SPと同等になる。

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この交換針は未入手だが果たしてどんな感じなのだろうか、同じテクニカで価格帯がほぼ一緒のMC型とVM型というこの2つのSP用カートリッジを誰か比較していないものかと思い、ネットを検索してみたが、まったくヒットせず。

ところが、検索中に思いもかけずAT-MONO3/SPについての貴重な情報に辿り着いた。このカートリッジはSP用であるにもかかわらず、SP用のイコライザーカーヴよりもむしろ、RIAAカーヴでの再生に適応しているというのである!

最初にみつけたのは、現5ちゃんねるの掲示板「[78rpm]SPレコードの電気的再生方法[65μ]」にあった甘木さんという方(この方の使っているプレーヤーも私同様CECのST930だという)の2006年4月の書き込み。ここの752がそう(これに関するやりとりは765あたりまで続いている)。該当箇所を以下に抜粋しておく。

イコライザーはRIAAで聴いてみたのですが
同じ演奏の復刻CDと比べて違和感を感じる事も無く、
素晴らしかったです。そのため今もMONO3/SPを使っています。

でもRIAAで使えるのが不思議だったのでテクニカに問い合わせて
みたところ、設計者の方から「あれはRIAAでSPを聴けるように
設計したカートリッジです」というお返事をいただきました。

だったら、何故それを売りにしないのか?とも思いますが
RIAAのイコライザーがそのまま使えるので、便利だと思います。

ウチではMC-4と組み合わせるSP対応のフォノイコライザーアンプ(モノラル)として、Sound BoxのMozart Phonoをちょうど22年間使用してきた。モノラルLP/EP用に6つのイコライザーポジションを備えたベーシックモデルに対し、私がオーダーしたのはAESとNABを78 USAと78 EU(米国系と欧州系のSP用)に置き換えたSPイコライザー搭載モデルだった。

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ポジション毎のターンオーヴァー(低域増幅周波数)とロールオフ(高域減衰周波数)は以下の通りとなる。

COLUMBIA 750Hz / 1590Hz
RCA  800Hz / 3000Hz
LONDON (ffrr) 500Hz / 3000Hz
RIAA 500Hz / 2120Hz
78 USA 500Hz / -
78 EU 250Hz / -

SP用に使われてきたカーヴも厳密にはいろんなパターンがあり、ロールオフもフラットとは限らないが、搭載されていたのは上記の2パターン。最近のイコライザーカーヴ可変フォノイコは、ターンオーヴァーとロールオフ(周波数よりもデシベル刻みのものが多い)をそれぞれ切り替えて数多くの組み合わせパターンを作れるものが主流となっているが、Mozart Phonoを入手した当時は、そのようなものは見当たらなかったように思う(存在を知らなかっただけかも知れないが)。

それはともかく、AT-MONO3/SPで聴く場合でも、当然のように78 USAポジションを選んでいたわけで、なんとなくバランスが悪いからRIAAで聴いてみよう、などという発想は浮かびもしないまま、あまり使わずに来てしまったのである。そんなわけで先の書き込みを目にして慌てて試してみたら、なるほど確かにRIAAで聴くとしっくりくるではないか。MC-4を78 USAポジションで聴いた時と、AT-MONO3/SPをRIAAで聴いた時とで、同じようなバランスになる。今まで感じていた違和感が払拭され、今更ながらようやくこのカートリッジの真価が理解できた感じだが、それにしてもどうしてこんな重要なことが今まで知られていなかったのか。もちろん取扱説明書にもカタログにもそんなことは一切書かれていない。

そう思って更に検索すると、「黄金のアンコールの音楽とオーディオの部屋」というブログの2016年8月の「Technics SL1200GAE」という記事に辿り着いた。ここで黄金のアンコール氏は

AudioTechnica AT-MONO3/SPは、通常のRIAAフォノイコライザを通すと普通にSP盤がバランス良く再生出来るような仕様になっているので、RIAAカーブと異なるSP用のイコライザは要らない。そうやって再生されたSP盤の中には、聴き慣れた蓄音機再生よりも電気再生の方が良いじゃないか、と思わせるものも多々ある。

と書く。その根拠は?と思い、掲示板で質問したところ、「オーディオ・テクニカの社員の方から聞きました」との回答が得られた。情報源は5ちゃんねるの甘木氏と同じである。

発言の裏付けは取れたが、公表されていない謎は深まるばかり。そして、そのように調整されたAT-MONO3/SPに対して、LP用のVM610MONOとは本体が同じで針が異なるだけのVM670SPは、RIAAでの再生には特に対応していないと考えるのが自然だろう、という一応の結論に達した。

それはともかく、AT-MONO3/SPがRIAAで聴けるということは、使い勝手が格段に良くなることを意味する。これまでSPを聴く際には、普段は ST930からディモジュレーター兼フォノイコライザーのVictor CD4-10改に繋いでいるフォノケーブルとアースを、いちいちMozart Phonoに繋ぎ換える必要があった。また、MC-4は針圧15gなのでトーンアームのウエイトを軽いものに取り替える必要があったが、AT-MONO3/SPの針圧は標準5g(3gから7gまでが適正値内)で、他のテクニカのカートリッジ用と同じウエイトのままで6gまで掛けられる。

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そしてこれも重要なことだが、Mozart PhonoのRIAAポジションよりも、CD4-10改に繋いだ方が音がよかったのである(以前も書いたが、これはモノラル盤をVM610MONOで聴いた時も同様)。実を言うと、モノラル初期盤LP再生時のColumbiaカーヴ等へのポジション切り替えの効果も、耳のせいか機械のせいかよくわからないがあまり感じられず、ということで22年間世話になったMozart Phonoはシステムから外した(早速ヤフオクに出したら、意外と高く売れてしまった)。

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MC-4はSP用としては当面の間本来の音では聴けなくなるが、針をLP用(1milと0.7milの2種類ある)に替えれば、それはそれで使える。

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ST930からのケーブルは、もうCD4-10改に繋ぎっぱなしでいい。ウエイトも替えなくていい。

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カートリッジというかヘッドシェルをパッと付け替えて針圧さえ調整すれば、SPを聴いたりモノラル盤を聴いたりステレオ盤やCD-4盤を聴いたり、ストレスなく移行できる。

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いや、この効果は実に大きい。細かく突き詰めるのも時に大事だろうが、手軽に聴けることの大切さを実感している。

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