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2021年10月

2021年10月13日 (水)

オーディオテクニカVM750SH ―CD-4再生用カートリッジとしての理想―

9月24日に新しいカートリッジ、オーディオテクニカのVM750SHがやってきて、それ以来愛聴盤を聴き直しては新たに感動するという日々を過ごしている。これは無垢シバタ針を備えたVM型(扱いはMM型と同じ)の上位機種だが、ディスクリート4チャンネル(CD-4)の再生においても、通常の2チャンネルステレオの再生においても、最高のパフォーマンスぶりを示してくれている。

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CD-4の再生については、これまで2月23日の「CD-4を中心とした4チャンネル・レコードの再生」、4月15日の「新たな機材の導入でノイズのないディスクリート4チャンネル・レコードの再生が実現」、9月19日の「アストル・ピアソラ・コレクション紹介/ディスクリート4チャンネル再生のその後」という3つの記事で紹介してきたが、実は2月23日の記事の最後の方で

現行のMMカートリッジの中では、オルトフォンの2M Bronze(無垢ファインライン針、20Hz~29kHz)、オーディオテクニカのVM750SH(無垢シバタ針、20Hz~27kHz)あたりがCD-4の再生に対応できそうだ。テクニカはMCカートリッジのAT33シリーズをずっとメインで使ってきたので、VM750SHもいつかは試してみたいものだが、当面はMC-3 Turboをじっくりと味わっていきたい。

と書いていた。このVM750SHは、時々お邪魔しているanalog BeatのJDさんも評価されるなど(該当記事はこちらこちら)音質面でとりわけ評判のいい機種だが、実際にCD-4の再生を試した実例はネット上にはなく(その後海外のフォーラムで一人これを推奨しているユーザーを発見)、果たしてCD-4の再生に威力を発揮してくれるか、一抹の不安はあった。もっとも、海外のQuadマニアの間では、テクニカのこれよりランクの下の機種のさらに旧タイプであるAT440MLb(シバタ針ではなくマイクロリニア針)というのが、ヴィンテージではない今のカートリッジの中でCD-4再生の定番となっているとのことなので、大丈夫だろうと思いつつ購入したわけである。そして購入を決断したのにはもうひとつ理由があった。2月の購入以来気に入って使っていた高出力MCカートリッジのortofon MC-3 Turboではあったが、内周近くでキャリア信号を読み切れずインジケーターが付いたり消えたりする盤が複数出てきたり、内周近くで歪みやすいのが気になり出していたのである。

そしてVM750SHを実際に聴いてビックリ。現在新品として入手できるカートリッジ(そもそもCD-4再生を謳った機種は皆無)としてはこれこそが最強と判断できるほどの能力の高さを瞬時に示してくれたのである。スペック上の再生周波数は上が27KHzだが、30KHzのキャリア信号を難なく読み取れることもあるのだろう、音の粒立ちがしっかりして定位の明確さが際立ち、歪みが少なく、情報量が多く、音楽を実に生き生きと表現してくれる。比べてしまうとMC-3 Turboは、ノイズ耐性は高いものの、残念ながらここまでの次元には達していなかった。

そしてこれはCD-4だけでなく、通常の2チャンネル再生にも言えることだった。単に音が良いだけでなく、コンディションの悪い盤、プレスに問題がありそうな盤をいかにまともに再生してくれるかというのを重要視しながら、この10年近く、同じテクニカのMC型AT33PTG/II(マイクロリニア針)とMC専用フォノイコライザーLINN LINTOの組み合わせをリファレンスにしてきたが、その組み合わせでもついぞ聴けなかった音が軽々と出てきたのには驚いた。歪みに強く、ノイズを抑え、必要な音は漏らさずきっちりと出してくるという、私が求める理想の姿がそこにはあった。もっともこれは、カートリッジ自体の性能だけでなく、シバタ針という針先の形状によるところも大きいかも知れないし、4月15日の記事で詳しく紹介したCD-4ディモジュレーター(兼フォノイコライザー)Victor CD4-10改造機との組み合わせも実にいい方向に作用しているようだ。

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実は今回同時に、同じシリーズのモノラルカートリッジVM610MONOも購入。これまで使っていたMC型AT33MONOの無垢丸針から接合丸針へとグレードダウンした形となったが、使い勝手などを考えてのこと。まだ十分には聴き込んでいないが、こちらもまったく問題なし。イコライザーカーヴ可変の管球式モノラル専用フォノイコライザーMozart Phonoよりも、RIAA固定だがCD4-10改(片チャンネルのみ使用)の方が、VM610MONOの持つ力はより明確に発揮されるようだ。

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昨年10月末の4チャンネル再生環境づくり開始からまもなく1年になるが、その間の変遷を表にすると次のようになる(AT33PTG/IIによるCD-4再生を目指しての、MC昇圧トランスやヘッドアンプの一時的な導入は省略)。

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audio-technica VM750SH

ということで、VM750SHの導入でようやく一応の終着点に辿り着けた感じだ。しかも通常の2チャンネルステレオの再生環境まで進化したのだから、言うことはない。

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