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2021年4月

2021年4月15日 (木)

新たな機材の導入でノイズのないディスクリート4チャンネル・レコードの再生が実現

※過去の記事『CD-4を中心とした4チャンネル・レコードの再生』と併せてお読みください。

2月23日に前掲記事をアップした際、最後に「CD4-30をフォノイコとしての通常のステレオ盤再生もいい感じなので」と書いた。これは実際にその通りで、調整されたAさんによればはっきりとした理由があるという。

「RIAA補正というのは御存じのように、レコード作成時に低域を抑え、高域を持ち上げた特性でレコード溝を作成し、再生時にイコライザアンプで低域をブーストし、高域をカットして録音時と同じ平坦な特性に戻すことを指します。
イコライザアンプは世界規約であるRIAA特性カーブを忠実に補正(イコライズ)するのが一番重要な要素となるので、高級アンプでは高価な誤差の少ないコンデンサや抵抗部品をあえて使用して実現させています。
通常のプリアンプ部では一つのイコライザ回路でこれをやるのですが、RIAA特性をさらに忠実に再現するため、さらに高級なアンプでは低域のブースト部と高域のカット部を分けた2段構成のイコライザアンプを用意して、低歪率と正確なRIAA補正を実現しています。
CD-4デモジュレータではイコライザアンプで高域をカットしたら30KHzで変調された4CHのサブ信号がなくなってしまうことになりますので、何と超高級アンプに使用されている方法と同じ2段構成のイコライザアンプを用意しているのです。
(中略)
CD-4デモジュレータには2CH出力に切り替えられるスイッチポジションもありますから、MMカートリッジでレコードを聴きたいなら高価なイコライザアンプを用意しなくても、4CHとか関係なしに落札されずに残っているCD-4デモジュレータが一番お勧めとなります。
でも世間の人は、CD-4デモジュレータとイコライザアンプは別物と思っている人が多いようですが・・」

ということで、長年愛用してきたMC専用のフォノイコライザー、LINNのLINTOは思い切って手放すことにした。そしてメインのMCカートリッジであるaudio-technicaのAT33PTG/IIやモノラル用カートリッジの同AT33MONOをCD4-30でも鳴らせるよう、初めてのMC昇圧トランスの購入を検討し、Phase TechのT-3の中古をヤフオクで落札。それが届いたのが3月8日だった。

Img_9159

一聴して実在感が増した感じで、最初の感触は良かった。

Img_9145

AT33PTG/IIはマイクロリニア針(ラインコンタクト針の一種)で再生周波数15~50,000Hzだったので、実際に繋いでみてCD-4盤の4ch再生も可能なことがわかったが、残念ながらノイズが乗りやすかった。

そのノイズの原因を探っていた矢先、またもやAさんから中澤さん経由で願ってもいない情報がもたらされた。とある4chレシーヴァーに第3世代ディモジュレーター用の例の「CD4-392」ICチップが搭載されていることに気付き、「IC自体が生きている事は確認出来たそうで、今後、それの載った基板を単体CD-4デモジュレイターに移植して使えるかどうかを探っていく」のだという。それが3月17日の夜のこと。その夜遅くAさんにリクエストを送り、「うまく動作させられるかは現時点では未知数です。移植先としてはCD4-10のケースを使用することを考えています。うまくいったときには改めてお声かけさせていただきます」とのお返事を頂いたのが18日の午前中。それがなんと19日の夕方には「作業が完了しました」とのメールが届いたので驚いてしまった。ただし予定よりも費用が掛かってしまったので、とりあえず貸し出すから使ってみてほしいとのことで送っていただき、3月22日の午前中に到着。

Img_9171

早速そのCD4-10“改造機”をセッティングし、ortofon MC-3 Turboで聴いてみて、ノイズの除去性能が極めて高いことを瞬時に確認できた。ノイズに強いMC-3 Turboでの再生であっても、盤によって特にそれまで目立っていた、ハイハットやシンバル、サ行、その他高音部への強烈な付帯ノイズはほぼ完璧に消え、チリチリしたノイズも目立たなくなり、結果的に全体の見通しがぐんと良くなった。

具体的にどのような改造が行われたのか。まず、Aさん提供によるデフォルトのCD4-10の内部写真を見てみよう(キャプションもAさんによる)。

Cd410
・左側基板:電源基板
・中央大きな基板:CD4デコーダ及びANR(Auto Noise Reduction)回路基板
・上部基板:信号分離用基板

ここに、レシーヴァーから取り出した、CD4-392を搭載した次の基板を組み込むのだという(これも画像はAさん提供)。

Cd4392

CD4-392の特徴をまとめると、「PLL(Phase Locked Loop)内蔵でCD4デモジュレート機能はもちろんの事30KHzキャリア信号の自動補正機能、ANR(Auto Noise Reduction)機能、信号分離・混合機能まですべて含んだものであり、第二世代のCD4-10やCD4-30の機能のほとんどがこのICの中で実現されてしまっていることになる」とのこと。技術的なことは私にはわからないのだが、Aさんの詳細な改造作業メモから、作業工程の大まかな要点を私なりに整理してみた。

(1) レシーヴァー側のマザー基板を調査し、CD4ディモジュレーター基板ソケットの役割を見つける

(2) CD4-10の改造:使用しない基板の撤去、電源部のメンテナンス、配線、ランプのLED化など

(3) CD4-392 ICチップ使用のデコーダー基板組み込み、調整

改造後の内部はこんな感じで(Aさん提供画像はここまで)、本来の基板のうち「利用するのは電源基板と第一イコライザ基板(RIAAのLOW-UP)のみ」で、組み込まれた上部の基板にディモジュレーター機能が集約されているため、このようにスカスカになるのだという。

Dscn3745

改造の効果は絶大だったが、そもそもなぜこのような七面倒くさい改造が必要なのか。CD4-392 ICチップを使用したディモジュレーターを最初から探せばいいのではないか、と思われるかも知れないが、そのようなものは手の届くところには存在していないのだ。1974年、CD4-392の開発によりCD-4再生の大きな弱点であったノイズ発生が克服されたというのに、その事実も知られないまま、既に4chは終焉期を迎え、各オーディオメーカーも見切りをつけていた。それでもビクターからは業務用のCD4-1000(当時の価格で48万円!)が出て、1976年にはその設計思想を受け継いだという民生用ディモジュレーターの最終機CD4-50(99,800円)が登場したが、受注生産品であり、幻の存在と化しているという。ただしCD4-392を載せた基板は、いくつかのレシーヴァーにひっそりと使用されていた。なのでこの改造は、そうした現実に即しているという意味で理に叶っているというわけだ。

CD-4の再生能力のみならず、CD4-10改造機はフォノイコライザーとしての性能も向上しているように感じたが、これについてAさんからは「CD4-392 ICには前後の和信号と差信号をMIXする部分も搭載しているので、ロールオフ部はCD4-392の基板上になります。ローアップのイコライザ部は底蓋を開けると見えます。CD4-30ではオペアンプを使用した簡易型のものでしたが、CD4-10では3石ディスクリート構成の立派なものが搭載されています」とのコメントを頂いた。

ただし、通常の2chステレオはともかく、AT33PTG/IIから昇圧トランスT-3を経由してのCD-4再生は、期待してみたもののやはり無理だった。CD4-30で聴くよりはだいぶまともだったが、内周近くでは全体にノイズが乗り、歪みっぽくなってしまう(後に判明したその理由については後述)。トランス経由での再生について、改造機をリクエストした際にAさんに尋ねてみたところ、Aさん自身はトランス経由でCD4再生した経験はないと前置きされた上で「トランスはインダクタンスを持っており、周波数が上がればインピーダンスが増加します。なのでCD4のように50KHzまで平坦な特性が要求される用途には不向きであるような気がします」との返答を得ていた。

ということで、昇圧トランスに換えてMCヘッドアンプの導入を検討することになった。VenetorのVT-MCTLというのが良さそうだったが、8万円台ではいかんせん高過ぎ、というか予算がない。ヤフオクで検索してみても、トランスと比較してヘッドアンプの選択肢はより少ない感じだったのだが、マークレビンソン JC-1DC(1974年発売)の回路をベースにしたという電池駆動式の自作ヘッドアンプが目に留まった。即決価格27,000円で、コンスタントに売れているようだった。評価欄のコメントのみが頼りだったが、思い切って落札し、3月29日に到着。

Img_9223

CD4-10改造機の上に載っているのが、その無印のヘッドアンプ。実は昇圧トランスのノイズの原因の一つは、AT33PTG/IIを取り付けたカートリッジとアームとの接点の汚れだったことが後からわかったのだが、それを解決してもノイズは完全には消えなかった。結局昇圧トランスは入手から1か月足らずで手放すことになったが、ヘッドアンプとの聴き比べの様子を以下にまとめておく。ハムノイズが出やすいのはトランスの方で、ヘッドアンプはヴォリュームを最大にしても問題なかった。

AT33PTG/IIからのステレオ再生:
トランスとヘッドアンプでは一長一短。ポップス系のマルチトラックレコーディングではトランスにやや分があった。太田裕美のシングル「九月の雨」の右チャンネルのギターのカッティングがトランスでは浮き上がって聴こえるが、ヘッドアンプでは埋もれがち。一方タンゴやクラシックなどのアコースティック録音の表現力はヘッドアンプの方が上だった。この結果は予想とは逆だった。

AT33PTG/IIからの4ch再生:
トランスよりヘッドアンプの方が、ノイズの出方はいくらか抑えられた。このノイズというのは、CD4-30での再生時にみられた、CD-4盤特有の不快なノイズとはまったく性格が異なり、ひび割れ、ザラツキ、かすれのようなものであり、特定の盤、特定の個所に現れる。また、キャリア信号を読み取るレーダーランプが時折弱くなることがある。

AT33MONOからのモノラル再生:
トランスとヘッドアンプの違いよりも(あまり突き詰めて比較しなかったが)、CD4-10の片チャンネル再生とMozart Phono(管球式モノラル専用フォノイコライザー)の違いの方がいくらか大きく、RIAAカーヴに限定すればCD4-10の方がより生き生きと鳴る。

MC-3 Turboによる再生:
ステレオであれ4chであれ、AT33PTG/IIを遥かに凌駕するクリアでワイドで生き生きとした再生能力を発揮。この差はなんだろう。そもそもAT33PTG/IIを長年リファレンスとして使ってきたのは、ソースや盤のコンディションをあまり選ばず、クリアでフラットな再生をしてくれるところが気に入っていたからなのだが、そのお株をすべてMC-3 Turboに奪われた形になってしまった。だとすると、今使っているAT33PTG/IIには何か問題があるのだろうか。今のは二代目で、2019年6月に新品で購入したもの。針先はジェルタイプのスタイラスクリーナー(DS Audio ST-50)で常にきれいにしているので、トラブルは考えにくいのだが。

MC-3 Turboは出力電圧3.3mVの高出力MCカートリッジだから、ディモジュレーターのMM入力端子に直接繋ぐのが適切な接続方法なのだろうが、いろいろ試していて、繋ぎ換えが面倒だったのでヘッドアンプを挟んだ状態のままで鳴らしてみたら、何とこれがベストだった。ヘッドアンプを通すことで余裕が生まれるのだろう、ステレオでも4chでも、より堂々とした力強い表現が聴けるようになったし、ノイズにも更に強くなった。主にAT33PTG/IIのために用意したヘッドアンプがMC-3 Turboのよりよい再生に役立つとは、まったく思いも寄らなかったことだが、結果良ければすべて良し。ノイズと無縁になったCD-4サウンドを最強の組み合わせで聴けるのは実に恵まれたことだが、この感動を容易に他者と分かち合えないのが歯がゆくもある。

【2021年9月19日追記】上に書いた、ヘッドアンプを通してのMC-3 Turboの再生には問題があることが判明した。詳しくは9月18日の記事「アストル・ピアソラ・コレクション紹介/ディスクリート4チャンネル再生のその後」を併読されたい。

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