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2020年9月25日 (金)

内山田洋とクール・ファイブのレコード(10)~シングル「噂の女/だまって行かないで」

前回ご紹介した8トラック・カートリッジ『クールファイブ デラックス』(発売日不明)と恐らくほぼ同時期に、「愛の旅路を」に続く内山田洋とクール・ファイブ5枚目のシングルがリリースされた。

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● シングル05

A) 噂の女
山口洋子 作詞/猪俣公章 作曲・編曲

B) だまって行かないで
山口洋子 作詞/内山田洋 作曲/森岡賢一郎 編曲

RCA JRT-1095 1970年7月5日発売

ジャケットではグループ名表記と比べて“唄/前川 清”の文字がやたら大きいが、この「噂の女」は、第4回でもご紹介したように、既に1969年11月5日発売のファースト・アルバム『内山田洋とクール・ファイブ』にアルバム・トラックとして収録されていた曲である。同アルバムから「逢わずに愛して」が1か月後の12月5日にシングル・カットされた際、候補として争った曲のひとつであることも、第4回第6回で触れた。その後に「愛の旅路を」を挟み、アルバム・リリースから実に8か月後に5枚目のシングルとして登場したわけである。

作者の二人、まだ新人だった作詞の山口洋子と、森進一のヒット連発で勢いに乗る作曲の猪俣公章については、第4回で「一度だけなら」を紹介する際にも触れたが、こちらは書き下ろしではない。山田競ディレクターがアルバム用の曲を猪俣に依頼しようとしたところ、「ビクターの磯部(健雄)さんのところに森君用に預けてある曲があって、レコーディング予定がとりあえずなければもらえるかも知れないよ」との返事があり、それが「噂の女」だった。山田によれば「レコーディングのとき、スタジオで作曲の猪俣公章さんが、“冗談じゃないぜ、この曲はざる蕎麦の味なんだぜ。それをレストランで食わせる気か”といい出したんです。私は私で“クール・ファイブのキャラクターは、レストランのざる蕎麦なんです”といって、ひと悶着あったんです」(中山久民・編著『日本歌謡ポップス史 最後の証言』[白夜書房]より)とのことだが、3連のロッカ・バラードながらマイナー・スケールで、アルバムの中でも演歌色のひときわ強かった「噂の女」が最終的にシングルに選ばれたのは、社内(特に営業だろう)からの強い要望を反映してのことでもあった。

「逢わずに愛して」同様、シングル化に際し、前川清はヴォーカルをすべて録り直しているが、かなりエグみのある歌い方に変えていて、全体的にパワーが増している。特にサビの「♪うわさ~の」の「さ~」の部分でアルバムではストレートに上がっていたところ、シングルではポルタメントを大胆に効かせるあたりに顕著だ。この歌い直しは大正解で、チャートでは「長崎は今日も雨だった」以来の最高2位を記録、売り上げも50万枚を突破した。コーラスと伴奏はミックスまで同じで、マスタリングの際にイコライジングの調整が行われた程度だと思われるが、何故かアルバムでは“毛利 猛 編曲”、シングルでは猪俣が作・編曲を手掛けたことになっていて、どういうことなのか謎だ。ネットで検索しても毛利のプロフィールは出てこないが、猪俣のペンネームなのだろうか?

「逢わずに愛して」のシングル・ヴァージョンはその後オリジナル・アルバムへの収録はなかったが、「噂の女」の再録の方は、改めて1970年9月25日発売の『内山田洋とクール・ファイブ 第2集』の冒頭に収録されることになる。以後のベスト・アルバムで、シングルではなく最初のアルバム・ヴァージョンが収録されてしまったものに『豪華盤「内山田洋とクール・ファイブデラックス」第1集』(JRS-9089~90、1972年2月)、『内山田洋とクール・ファイブ・ベスト24デラックス』(JRS-9185~6、1973年11月)、『内山田洋とクール・ファイブ~オリジナル・ゴールデン・ヒット曲集』(JRX-9、同)がある。

当初森用に用意された「噂の女」が、磯部ディレクターの机の引き出しに眠ったままになっていた経緯はわからない。磯部の判断だったのか、他に優先すべきネタがあったのか。森はこの曲のことを知っていたのか(恐らく知らなかっただろう)。それはともかく、クール・ファイブが大ヒットさせた後になって、森もこの曲をレコーディングすることになる。

Sjv489

1970年12月5日発売の『演歌』(Victor SJV-489~490)は、「デビュー5周年記念豪華アルバム」と但し書きの付いた2枚組で、各サイドにそれぞれ「森進一が唄う最新ヒット・アルバム」「森進一が選んだ森進一ベスト・ヒット」「森進一の抒情歌」「森進一がつづる全国夜の盛り場」というテーマが設けられた構成となっていた。この中の「最新ヒット・アルバム」サイドに、森自身の最新ヒット「銀座の女」、藤圭子の「命預けます」、野村真樹の「一度だけなら」などと共に「噂の女」も収録されたというわけだ。編曲は、クール・ファイブのシングル担当を「噂の女」で初めて外れた森岡賢一郎で、コーラスがないこともあってかややあっさり気味の仕上がり。森も個性は出しているが、あくまでも“カヴァー” の範疇を超えるものではなく、やはり結果的にはクール・ファイブに回るべき運命だったのだろう。

カップリングの「だまって行かないで」は同じ山口の作詞で、作曲は内山田洋が担当。シングルB面はデビュー以来城美好作品が4曲続いたが、ここでメンバーの作品がシングルへの初起用となった。同じ3連ながら、A面の泥臭さとは打って変わって洋楽的雰囲気もある、洒落たタッチの作品に仕上がっている。編曲は森岡で、ギターの使い方もギタリストである作曲者の意図が反映されている感じだ。

前回も触れたように、この曲は8トラック・カートリッジ『クールファイブ デラックス』にいち早く収められたが、次のアルバム『内山田洋とクール・ファイブ 第2集』では見送られ、オリジナル・アルバムへの収録が叶うのは1971年12月の『港の別れ唄/内山田洋とクール・ファイブ 第3集』まで待たされることになる。

(文中敬称略、次回に続く)

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