フォト
無料ブログはココログ

« アメリータのレコード その5 | トップページ | 続・ピアソラの新しい10枚組 »

2009年10月24日 (土)

ピアソラの新しい10枚組(1940~50年代録音集成)

"Master Of The Bandoneon"なる10枚組。ドイツのMembranからの発売。アマゾンでは異様に安い。詳しい内容はこちらで見れます。ちなみに私は注文していませんので、以下は曲目だけを見ての記述であることをあらかじめご了承下さい。

中身はどうなっているかと言うと、CD1からCD4(最後の1曲除く)までの71曲は、アニバル・トロイロのオルケスタ・ティピカのRCA録音です。ピアソラがトロイロ楽団に参加したのは1939年12月のことで、RCAへの最初の録音は1941年3月4日の"Yo soy el tango"/"mano brava"だから、当然この時点でピアソラも参加していますが、なぜかこの10枚組は通算28曲目の録音にあたる"Papa baltasar"(1942年4月16日録音)からスタートしています。
ピアソラがトロイロ楽団を脱退した正確な日付は不明のままですが、フィオレンティーノ楽団の伴奏指揮者としてデビューしたのが1944年9月2日のことなので、その少し前と思われます。拙著『闘うタンゴ』のディスコグラフィー(付録1)では、トロイロ楽団での最後の録音を1944年6月27日の"Naipe"、"El entrerriano"あたりと仮定しています。ところがこの10枚組では8月1日録音の"Rosa de tango"、"Me estan sobrando las penas"、8月31日録音の"Alhucema"まで収めているんですね。さすがにこれは無理があるんではないか(参加している可能性もゼロではありませんが)。8月31日録音はもう1曲あるんですがそちらは未収録、というのもよくわかりません。なお、トロイロのRCA録音は全曲がアルゼンチンでCD化済み。

で、フィオレンティーノ=ピアソラ楽団のOdeonへの最初の録音"Corrientes y Esmeralda"(1945年5月19日)がポツンとCD4のラストに入っていて、CD5はそれに続く"Si se salva el pibe"から"Burbujas"まで、インストの"El silbido (La chiflada)"、"Color de rosa"を含む18曲を収録。CD6の冒頭に収められた"Quien te ha traido"から"Otros tiempos y otros hombres"までの5曲でフィオレンティーノ=ピアソラ楽団の録音全24曲が完結。
ピアソラのオルケスタ・ティピカ、通称“46年のオルケスタ”のオデオン録音全32曲(1946~48年)は、CD6の6曲目からCD8の1曲目まで(これまた半端だ)に、これも録音順にすべて収められています。
ちなみに過去の編集盤としては、フィオレンティーノ=ピアソラ楽団の24曲中インスト2曲を除く22曲は2005年発売の"Su discografía juntos"(EMI/DBN 7243 4 77604 2 6)に、そこで省かれたインスト2曲と46年のオルケスタの全曲は日本盤『ブエノスアイレスな夜 1945-1956』(廃盤)にまとめられています。

CD8の2曲目からは、貴重なtk(テーカー)録音(1950~52年)から5曲。tkへの録音には、録音のために一時的に召集されたオルケスタによる4曲と、女性歌手マリア・デ・ラ・フエンテを無署名で伴奏した8曲があります。せっかくだからリストアップしておきましょう。
S-5012 "El choclo"/"El cielo en las manos" (Maria de la Fuente) 1950
S-5014 "El lloron"/"Canción celestial (Maria de la Fuente) 1950
S-5026 "Chiqué"/"Triste" (A. Piazzolla y su Orquesta) 1950
S-5036 "La cumparsita"/"Dedé" (A. Piazzolla y su Orquesta) 1951
S-5061 "La misma pena"/"Romance de barrio" (Maria de la Fuente) 1951
S-5104 "Fugitiva"/"Loca" (Maria de la Fuente) 1952
このうち、オルケスタによる4曲は、先だって目出度くCD化されました。ラティーナ5月号の記事でも紹介した"Su primera orquesta 1945-51"(EURO EU 14015)に、フィオレンティーノ=ピアソラ楽団および46年のオルケスタによるインストゥルメンタル全18曲に続く形で収められていたのです。
それで、この10枚組にはオルケスタの4曲のうち"Chiqué"と"Triste"のみ収録。そしてマリア・デ・ラ・フエンテの方は"El lloron"、 "Canción celestial" 、"Fugitiva"の3曲が収録されています。このうち"Fugitiva"はフアン・カナロ楽団とデ・ラ・フエンテ名義の"El tango en Japón"で過去にCD化されています(クレジットでは1946年録音、エクトル・アルトーラ編曲指揮と誤表記)。カップリングの"Loca"("El tango en Japón"に収録の同曲はフアン・カナロ楽団による伴奏。これも編曲はピアソラですが)が未収録であることから見ても、このCDからそのままパクったんでしょう。LP時代にはオムニバス盤に音の悪い状態で収録されたことのあった"El lloron"は、ブエノスアイレス・タンゴ・クラブがマニア向けに作っているシリーズの中の1枚、"La Época de Oro Vol. 4 (1927 - 1951)"(現物未確認ですが、恐らくCD-R)にも収録されていたようです。"Canción celestial"は恐らくこれが初のCD化。どうせなら他の曲も入れてほしかったところですが、音源が見つからなかったんでしょうね。そのうち"El choclo"は先日も紹介した通り、小松亮太の新譜『碧空~昭和タンゴ・プレイバック』に大城クラウディアの歌で再現されています。
で、ピアソラ本人が関わった音源で私が唯一現物未入手のままなのが、デ・ラ・フエンテのS-5061 "La misma pena"/ "Romance de barrio"なのです。デ・ラ・フエンテとの8曲の復刻は私の悲願でもあるのですが、今では何とネット上でMP3が聴けるんですね。 "La misma pena""Romance de barrio"も。すごい時代になったものです。

CD8の7曲目からCD9の4曲目までは、パリでの弦楽オーケストラによる録音がFestivalへの4曲、Vogueへの8曲(アルバム『シンフォニア・デ・タンゴ』)、Berclayへの4曲の順番で全曲収められています。
パリでの録音全16曲がはじめてまとめられたのは1996年のフランスSono Punch盤"Paris 1955"が最初でしたが、早くに廃盤となりプレミアが付いていました。日本ではBMGから『シンフォニア・デ・タンゴ』が単体で、Berclayの4曲は『ブエノスアイレスの夏~ピアソラ・レア・トラックス』に含まれる形でそれぞれ発売されていたんですけどね。今年に入り、Euroから16曲入りの"Sinfonia de tango - Paris 1955"(EU 14016)が出ましたが、Vogue録音の"Bandó"がピアソラではない別の録音(LP時代からよく混同されていた"Quinteto Nuevo Tiempo"なるエレキ・ベース入り五重奏の演奏)と入れ替わってしまうという痛恨の編集ミスがあったのでした。と思いきや、この16曲を含むCDが他にも出ていたのでした。これも私は現物未確認ですが、Lantowerというレーベルから出ている"Grandes Del Tango / 18"という2枚組。CD1はパリ録音16曲(曲順はランダム)、tkのオルケスタ2曲(10枚組と同じく"Chiqué"と"Triste")、46年のオルケスタの録音のうちピアソラの自作曲5曲と続いています。CD2はオルケスタの録音から選んだ25曲を収録。Lantower盤やこの10枚組の"Bandó"には、Vogue録音が正しく収録されているんでしょうか。

以下はすべて帰国後の1956~57年の録音。実はこの時期の録音の集大成がLantowerから出たばかりで、これまた私は現物を確認していませんが、先に紹介しておくと、 "Completo 1956 - 1957"という2枚組で、オクテート・ブエノスアイレスのAllegro盤(全6曲)とDisc Jockey盤(全10曲)、弦楽オーケストラのtk録音4曲、Antar盤(8曲)、Music Hall盤(10曲)、Odeon録音2曲がきちんと整理されて収められているのです。これで当時リアルタイムで発売されたすべてを網羅していることになります。
ピアソラ史の中で極めて重要な作品でありながら、長年復刻の機会に恵まれずファン垂涎の存在だったAllegro盤"Tango progresivo"(オリジナルは10インチLP)は、昨年末にFonocalからオラシオ・サルガンのAntar盤とのカップリングで初CD化されたあと、EuroからDisc Jockey盤(オリジナルは"Tango moderno"、こちらは何度もCD化されている)とのカップリングで"Octeto Buenos Aires - 1957"としてもリリースされました。私はFonocal盤を聴いていないのですが、同じようなLPからのダビングでありながら、Euro盤の方が音がいいようです。Lantower盤の音質が気になるところですが、弦楽オーケストラの1956年のtk録音が4曲全部まとめられたのはこれが初めてのはずだし、お買い得感ではLantower盤の方が上かも知れません。

で、Membranの10枚組に話を戻しますが、CD9の5曲目から7曲目までは、1973年にMusic Hallから出た7インチ盤の4曲のうち、1990年発売の編集盤CD"Vanguardistas del tango"(オスバルド・ベリンジェリとのスプリット・アルバム)に収録された3曲が並んでいます。7インチ盤の4曲というのは、弦楽オーケストラのtk録音のうち"Sensiblero"を除いた3曲("Azabache"、"Lo que vendrá"、"Negracha")と、オクテート・ブエノスアイレスの恐らくこの時点まで未発表だった"Taconeando"。そしてCD化に洩れたのは"Azabache"。ということでLantower盤が初CD化の"Sensiblero"と"Azabache"は10枚組には未収録。逆に"Taconeando"はLantower盤からは洩れた、ということになります。ややこしくてすみませんが、私が話をややこしくしているわけではありませんので。
CD9の残りからCD10にかけては、弦楽オーケストラのOdeon録音2曲(『ブエノスアイレスな夜 1945-1956』、"Octeto Buenos Aires - 1957"、"Completo 1956 - 1957"にもそれぞれ収録)、オクテート・ブエノスアイレスのDisc Jockey盤、弦楽オーケストラのMusic Hall盤(名盤"Tango en Hi-Fi")と続いて終わります。

あー、疲れた。

« アメリータのレコード その5 | トップページ | 続・ピアソラの新しい10枚組 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ピアソラの新しい10枚組(1940~50年代録音集成):

« アメリータのレコード その5 | トップページ | 続・ピアソラの新しい10枚組 »

2024年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31