プグリエーセの4枚組
今年はオスバルド・プグリエーセの生誕100周年、没後10周年にあたります。1939年に公式にデビューしたプグリエーセ楽団は、1943年にオデオン(現EMI)に録音を開始、60年代はフィリップスなどに移籍していましたが、72年にオデオンに復帰してからは、晩年までそこで録音を続けました。記念盤としてEMIから発売されたばかりの4枚組"Edición Aniversario"(アルゼンチンEMI 0946 3 35997 2 7)は、オデオン/EMI時代のプグリエーセの集大成。EMIに残されたスタジオ録音300曲余りの中から100曲が選ばれています。曲目をパッと眺めると、代表的な名演を時代を追って収録したもの、と言う風に見えますが、実は明確なコンセプトをもって編集された、凄い盤なのです。
プグリエーセ楽団は、別名「作曲家たちのオルケスタ」とも呼ばれたほどで、御大プグリエーセはもとより、参加メンバーに多くの優秀な作曲家を擁していました。オスバルド・ルジェーロ、ホルヘ・カルダーラ、エミリオ・バルカルセ、イスマエル・スピタルニク、マリオ・デマルコと、枚挙に暇がないほど。そして、この4枚組は、そうした側面にスポットを当てた形になっています。そう、プグリエーセ及びメンバーが書いた作品のうちEMIに残された録音が、何とここには全曲含まれているというわけ。これはもう、画期的です。しかも、すでに脱退したメンバーの作品を取り上げたものも、ちゃんと含まれています。実際には、歌手のアベル・コルドバが書いた(オッタビアニと言う人との合作)"De espaldas"(83年6月録音)だけが抜けてしまっていますが、これはミスでしょう。
もう一つの特色は、楽団に参加した全歌手をフィーチャーしている点。専属歌手として活躍した11人(オデオンに録音のないアルフレド・ベルーシは当然除く)の、楽団での最初の録音が網羅されています。ロベルト・チャネル、アルベルト・モラン、ホルヘ・マシエル、ミゲル・モンテーロ、アベル・コルドバといった主要歌手は複数の録音が収められていますが、最初の録音以外はすべてプグリエーセまたはメンバーの作品のみ、という徹底ぶり。かわいそうなのがフアン・カルロス・コボス(1953年から54年にかけて在籍し7曲を録音)で、最初の録音がアルペルト・モランとのデュオで、その後メンバーの作品を録音していないために、単独で歌った曲が収録されないということになってしまったんですね。
歌手といえば、77年にはネリー・バスケスを招いて1曲録音、82年にはマリア・グラーニャ、エルナン・サリーナス、ホセ・アンヘル・トレージェスら8人の歌手(+専属歌手のアベル・コルドバとアドリアン・ギーダ)を招いてのアルバム"Futuro"(未来)を制作していますが、これらゲストたちとの録音もすべて収録されています。ギーダはこの時が初録音だったので、結局このアルバムからはコルドバの1曲を除いた全曲が収録、となりました。
それ以外に収録されているのは、アグスティン・バルディ「エル・ロデオ」(デビュー録音)、フリオ・デ・カロ=ペドロ・ラウレンス「マラ・フンタ」、ペドロ・マフィア=ペドロ・ラウレンス「アムラード」、エドゥアルド・アローラス「ラ・カチーラ」、フランシスコ・カナロ「ピンタ・ブラバ」、アストル・ピアソラ「栗色と青色」という、タンゴ史上極めて重要な作曲家の作品(インストゥルメンタル)で最初に録音した曲。で、トータル100曲になるという案配。だから、既成のタンゴを取り上げての名演、例えば「チケ」「パリのカナロ」「7月9日」「ガジョ・シエゴ」「場末」「酔いどれたち」なんてのは、入っていないわけです。曲目を眺めて名演が揃っているように思えるのは、それだけ自作曲群の質が高いから。プグリエーセ楽団での演奏に特化したために、一般的な意味での名曲とはされていないものも多いわけですが。
2年ほど前にでた"Pugliese por Pugliese"というプグリエーセ自作自演集で、「影のように Igual que una sombra」「輝ける東京 Tokio luminoso」「コンパニェーラ Compañera」という未発表録音3曲(正確な録音時期は不明、89~92年頃か?)が初登場しましたが、悪名高きCCCDだったので、私は買いませんでした。その3曲が今回改めて収録されているというのも、ポイントの一つ。今回は通常のCDですからご安心を。クレジットが抜けていますが、「影のように」はギーダ、「コンパニェーラ」はコルドバが歌っています。このような表記ミスがあったり、肝心の録音年月日が記載されていなかったり、いくらか不備もありますが、過去に出た様々なプグリエーセの編集盤と比べても、とくに優れた編集であることは間違いありません。
Comments
« 『闘うタンゴ』増刷、『ピアソラの至宝』第2期 | トップページ | Number PLUSにタンゴの紹介記事 »
「音楽」カテゴリの記事
- とりあえず(2024.05.10)
- フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ、CD44枚組+LP1枚を収録した究極のBOXセット、満を持して登場!(2023.06.06)
- 洋楽聴き始めて50年、そのオーディオ遍歴など(2022.10.19)
- ピアソラ没後30周年、『アストル・ピアソラ 闘うタンゴ』改訂版のお知らせ(2022.07.04)
- 割れたSPレコードの修復、オーディオテクニカAT-MONO3/SPによるRIAAカーヴでの快適なSP再生(2022.02.11)



初めまして。
数年前に買ってあんまり聴いていなかったプグリエーセのベスト盤(肖像Vol.1)を、今頃になって引っ張り出して最近タンゴにハマっていたりします。
もう少しいろいろ聴いてみたいと検索しているうちにここにたどり着きました。
この4CD、気になりますね。
「La Yumba」はやっぱりオリジナル(46年)の録音なのでしょうか?
50年代の再録音版があるのを知って収録しているCDを捜しているのですが、さっぱりで(汗
レコードでないと聴けないのでしょうか?
ともあれこの4CD、これだけまとめて聴けるのはありがたいので入手してみようと思います。
サイトのほうの記事も素人の僕にはとても勉強になります。
ここで知ったデ・カロやアローラスを聴いてみようと思っています。
それでは、失礼致します。
Posted by: Graham | January 15, 2008 at 02:51 PM